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ああああ

漫画・本・映画・演劇・その他コンテンツの感想を書く場としてがメイン。日本語の練習を兼ねています。

2013年漫画ランキング を解説しました

個人的な、2013年漫画ランキングです。1位から30位まで。
集計期間は2012年11月1日~2013年10月25日。

この間に始まった、単行本がでた、などなど今年の漫画が対象。

そもそも漫画ランキングは漫画の一覧を見ればその意義がわかるべきで、言葉はただ蛇足なだけだという向きもありますが、個人的なケジメとして、ひと通りの言葉を尽くしておきたいと思ったので。

1位 マジカルシェフ少女しずる/水あさと

マジカルシェフ少女しずる(1) (アース・スターコミックス)

マジカルシェフ少女しずる(1) (アース・スターコミックス)

言わずと知れた水あさとによる、魔法少女クッキング漫画。ソードマスターヤマトのような勢いだけのギャグ漫画で、超展開に次ぐ超展開と執拗なギャグの反復が魅力。少なくとも1巻は、1話から最終話、そして次巻予告に至るまで全く無駄がない。2巻は1巻の方法論にとらわれてヘンテコ展開にしようと苦心してる感じがしてキビシイ。

漫画ランキング発表してる人でこの「しずる」を1位にしてる人が居てビビったけど、2巻は面白くねぇから。まぁ、個性ある1位がいいなぁと思ってこれにした。

2位 うきわ/野村宗弘

うきわ 1 (ビッグコミックス)

うきわ 1 (ビッグコミックス)

やわらかスピリッツにて連載中の、「うきわ」。
浮気された新妻にとっての心の浮き輪は、同じく妻に浮気された隣人の夫だった……という、アナグラムも絡めたタイトル。作者の生活場面を上手に切り取るセンスによって、浮気未満の新妻と隣人の関係が絶妙に描かれ、毎話毎話しっかりとしたドラマがある。心情を漫画的に描くのがほんとうに上手い。洗濯機の渦の中に沈んでいって溺れていく心、ゴミ出しというほんの短い時間だけの心の交流、心に被せた仮面……。たびたび挿入される無言のコマがテンポを作り、こちらの心情を煽る。う~ん、これからどうなるんじゃ~~~~。

コミックスでは各話の間を繋ぐ心象風景も追加されている。
イブニングで連載中の「満月エンドロール」も6話まで読んだ限りではかなり良かったけど、イブニング追ってなくて入れられなかった。残念。

3位 17歳℃/麦盛なぎ

なんか、今年はいっぱい漫画を読んだつもりだったのだけど、いざランキングを作るという段になると全然思いつかなくて、こんな上位に食い込んでしまった感はある。3位でもうそういうこと言い出すのヤバい感じあるけど、まぁ良いマンガやで。

ストーリーとしては、クラスでもパッとしない少年と、ちょっとミステリアスな転校生が出会って恋愛して、みたいな典型的ボーイ・ミーツ・ガール。

この漫画の特に優れてる点は、童貞感。女の子がやたらエロっちくて、でもそのエロさは、ねっとりした艶かしさとは違った、繊細で壊れそうな思春期のエロやねんなぁ。男の方の、見てるこっちが熱くなるような思い出し興奮とか、くぅ~。そういう思春期の瑞々しさが、うまく紙面に載ってるんですな。まぁそれが作者の技量に因るものかどうかはさておき。新人の初単行本だし、これからに期待。

4位 甘々と稲妻/雨隠ギド

甘々と稲妻(1) (アフタヌーンKC)

甘々と稲妻(1) (アフタヌーンKC)

甘々4位か……。なんで4位にしたんだっけ……。まぁ、僕は家族ものに弱いんです。この漫画は料理漫画というか擬似家族漫画で、妻に先立たれた男とその娘+父を亡くして母が忙しい女子高生、が、いっしょにごはんを作って食べるという。家族に飢えた人間たちが寄り添い合って一緒にご飯を食べる漫画なんですよ。入れてしまうわ。

特に一話の、忙しくて料理ができない父が買ってきたコンビニ弁当の味を「ふつう」と答えて黙々と食べていた娘が、ただ土鍋で炊いただけのご飯を口いっぱいに頬張り「おいしい!」と声を上げる様には、涙が出ちゃう。入れちゃった。でも振り返ったら高いかもわからん。あざといと指摘されることも多い本作だ。

5位 神様がうそをつく。/尾崎かおり

神様がうそをつく。 (アフタヌーンKC)

神様がうそをつく。 (アフタヌーンKC)

はぁ~。

まさに「ひと夏の思い出」と呼ぶべき作品で、大人への反発、少女との出会い・交歓、そして子どもゆえの無力さの痛感・成長がある。小学生だけの暮らしなど上手くいくはずもなく、楽しい擬似家族は、ただただ彼女の精いっぱいの虚勢の上に辛うじて成立しているだけだったのだ。彼女のあまりに細い腕にどれだけ重い荷物が抱えられているのか知った時には、大人の都合で生活は破綻してしまった。そこで受けるクラスメイトの陰口、「捨て子みたい」という台詞は、期せずしてまったく的を射たものであり、その正当性にはゾッとする。しかしその正当性は彼女を救わない。怒り出す彼はまったく不条理だ。でも!そうするしかないんだよ!そこで逃避行ですよ!もう、逃げるしかないねん。彼女のために何かしたい、何かしなきゃいけない、でも何をすればわからんねん!そこでの逃避行はまさに仮初で、どうにかなるわけがないのだけど、仮初ゆえの美しさがある。キラキラと儚い輝きを放っている。すぐに大人に捕まってしまったけど、それは彼女も了承済みで、思い出にはなる。「家族になってくれて、嬉しかったよ」って。夏は終わった。でも季節は巡り巡り人生はこれからも続いていくから、頑張って生きてかなあかんねんで。支えになる思い出もできたし、きっと夢も叶うからな。

少年にとっては、デリカシーに欠けるコーチとの衝突から始まったストーリーだったのだけど、「大人-神様-も、嘘をつく」という現実を噛み締めたことで、成長できたんちゃうんかなぁ。

ネタバレ含む
ダリザキには、「例えば祖父の死体を埋めたことなど、少年少女たちには乗り越えるべき大きな問題があったはずで、そういったものを全て置き去りにしてあたかもハッピーエンドであるかのように終えるのは甚だ欺瞞的だ」という批判を受けた。
僕としては、乗り越えるべき問題は彼女と弟がゆっくり向き合っていくべきもので、少年が答えを出せることではない。さらに言えば「祖父の死体」については、ただ気持ちの整理ができていないだけで乗り越えるべきトラウマってわけでもない気がする。実際忘れて暮らせていたわけだし。そこで少年がすべきことは彼女らの心の支えとなることで、がむしゃらに力になりたいと思ったことはちゃんと形になったんじゃない?、と思う。

6位 さきくさの咲く頃/ふみふみこ

さきくさの咲く頃

さきくさの咲く頃

今年一年マンガを読んでいて強く意識したことに、「人生辛いことあっても生きてかなアカンねんな」ってことがある。*1
5位の「神様がうそをつく。」も、まさにそのような作品だが、こちらもそう。
「女の穴」では作者の良さがよく解らなかったが、これは絵の美麗さ、大ゴマの使い方、性の視点などとっても好みだった。特に良かったのが二点。
一つは、ラストの「独りよがりに過ぎない」という指摘さえも、自分が想像したキャラクターによる自己完結的な批判だということ。
二つは、高校生の主人公が仲良し3人組との幼き思い出がしばしば現在と重ねられるのだけど、そうして過去を回想して思う現在(高校生時代)さえも、今の僕(大学生)から見れば過去であって、人生は続いていくんだなぁと重層的に感じさせられたこと。これはラストの、季節がめぐりこれからも人生は続いてくのだから、という結びとも合致して、あの時に戻ることは出来ないし、いつまでも同じ関係で停滞していくことも生きている限りは出来なくて、それでも生きてさえいればいつかは巡り巡って、また逢える時が来るだろうから、はぁ~人生辛いことあっても生きてかなアカンねんなぁと感じた。

7 位 スメルズライクグリーンスピリット/永井三郎 COMIC Be

スメルズライクグリーンスピリット SIDE:A (POE BACKS) (ポーバックス Be comics)

スメルズライクグリーンスピリット SIDE:A (POE BACKS) (ポーバックス Be comics)

BLから。BLというと身構える人も多いと思うが、本作はいわゆる単なるホモの範疇に収まらない、マイノリティが生きていく上での苦難と選択を描いた青春ものとして非常によく出来ていると思う。
超・過疎の田舎なのに1クラスにホモが3(+1)人もいて思わず笑ってしまう。そういう設定やデフォルメも含め、前半は結構コメディチックにストーリーが展開されていくのだけど、そこからシリアスな、家族、恋愛、性的不和、アイデンティティの問題と正面から向かい合う。雰囲気の移行が上手なんだよね。作者はとても絵が上手く、表情が良いから恋してるさまも可愛く見えるし、狂気の滲んだ絵は怖い。
自分を抑圧して生きた反面教師としての柳田や、三島、桐乃、ノンケの夢野、それぞれの価値観を持って息子たちと接する母親ら。様々な立場の登場人物が作品の幅を広げ、問題に絡む希望と絶望を示す。
「親に勘当されて東京に出てきた」みたいな話が多くなりがちなホモ関連だと思うのだけど、作品の中で家族は大きな要素として扱われていて、諦めて個人主義に走るのではなく、社会・家族の中で自分たちの問題を考えている点も好評価。最後に、異なる生き方を選んだ2人が対照的な人生を送ってしまうことは非常に悲しくしかし仕方のない結末であった。少なくとも、僕にはとても悲しい終わり方に見えてしまった。恐らく、読み手によって受ける印象は異なるように思う。社会の中での生きづらさをうまく表現しながら、作品としてユーモアも失わず、それぞれの登場人物が強くメッセージを放つ。う~ん、別にホモは病気じゃないのになぁ。

8 位 宇宙怪人みずきちゃん/たばよう

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未単行本化。宇宙怪人みずきちゃん|Championタップ!で全話読めます。
期待の新人、たばようの初連載作。
ポップでキュートなクレヨン画みたいな画風と、グロテスクとエロスが溢れる内容に、痺れてしまった。
とろみのある液体にどっぽん飛び込むような、濃密でなまあたたかい漫画体験って感じだ。
あんまり言葉が出てこないよぉ。

9 位 SOUL CATCHER(S)/神海英雄

SOUL CATCHER(S) 1 (ジャンプコミックス)

SOUL CATCHER(S) 1 (ジャンプコミックス)

たぶん今年の新連載では飛び抜けて面白いんじゃないかな?まずタイトルが最高にダサい。SOULCATCHER(S)。心を掴む者て。このセンス。イイネ!さらに(S)これ。「一人じゃない!みんなで心を掴むんだ!」の強調の()。ヤバい。しょうみこれだけで6点はある。次表情。ヤバい。めっちゃ笑える。真剣すぎる表情がもう草不可避。テンションがアゲアゲ↑で、絶妙な滑稽さ。これでもう2点。あとふつうに展開が面白い。着々とサクセスしてて楽しく読める。2点。10点。神。今青春の輝き/The Carpenters聞いて泣いてる。
とまぁ草が生える漫画として漫トロに紹介したら、みんなただのクソギャグ漫画としてしか消費していなかったみたいでビックリしてしまった。ネタ的な要素ばかりを取り上げたのは反省しているけど、作者のセンスと演出はやっぱり独特の魅力を持ってると思う。前作ではその拙さが作品世界を破綻させてしまったのに対して本作では部内での地位をだんだん固めつつライバルや女の子との関係も描く王道的なストーリーに作者節がうまい具合に噛み合っている。個人的に、本作は成長漫画だと思っていて、たとえば他人と衝突しても向き合うことを選択したり、自分のやりたいことを父親にちゃんと訴えたり、「どうせ勝てない」と諦めず上を目指すことを思い出したり、楽しむだけでなく真剣に上を目指すことを思い出したり。こんなに「友情・努力・勝利」を全面に押し出すジャンプ漫画は久しぶりだと感じた。
つまりは、ネタ漫画としても楽しめるしジャンプ漫画としても楽しめる、一粒で二度美味しい漫画なんや。最近はもう慣れてきたのか落ち着いてきたのかネタ漫画として楽しめなくなってきた。毎週あんなに笑わせてくれたのに。

10 位 さよならタマちゃん/武田一義

さよならタマちゃん (イブニングKC)

さよならタマちゃん (イブニングKC)

イイハナシダナー。
精巣腫瘍という、キンタマの癌になった漫画アシスタントの自叙伝入院エッセイ漫画。「睾丸癌で入院なんて…ハハハ」と喜劇的な作品かと思ったら、抗癌剤の副作用、入院患者の背景、転移・再発の恐怖、発症する後遺症など、治療の過程を丁寧に描き、優しい職場や気丈な入院患者たち、ペット、そして献身的な妻の支えと、今までの環境の尊さに気づかせてくれる名作。「忙しかったのはホントだけど 命より大事な用事なんてひとつでもあったのかな」という患者の台詞が印象深い。1冊で3回泣いてしまった。
ただ、「漫画として特に優れている」というわけでは無いと思う。「人生辛いことあっても生きてかなあかんねんな」っちゅうことで、感動して、作品としても好きだから10位にしたことに後悔はないけど、全体ランキング1位*2になるべきマンガかというとちょっと頷き難い。
睾丸の異変に気づいてくれるパートナーがいますか? 僕はいません。

11 位リビドーハンタータケル/丈山雄為

リビドーハンタータケル 1 (ジャンプコミックス)

リビドーハンタータケル 1 (ジャンプコミックス)

構図や見開き、キャラクターの雰囲気など、清々しいまでの中山*3フォロワー。まったく、中山敦支+性的要素、神。エロ、勢い、ギャグ。こういうの、好き。いかに擬似性器や擬似セックスを作品内に表現するというチキンレースに堕すのではなく「セックスが描けないならキスを描けばいい」という革命的な回答を与えてくれた。
まぁ射精枠だけども、エロコメとしてとても笑えるので、4,5巻ぐらいですっきり終わってくれると本棚的にはありがたいのだけどなぁって感じかな。

12 位トンネル抜けたら三宅坂/月子 森高夕次

トンネル抜けたら三宅坂 1 (ビッグコミックス)

トンネル抜けたら三宅坂 1 (ビッグコミックス)

性欲がふつうの男子小学生の10倍ある男の子が主人公のお話です。
もう表紙から明らかなんだけど、オッサンのエロギャグセンスに月子先生の可愛らしい絵柄の女の子と少年のミスマッチ感が堪らない。冒頭三話だけあった原作者と作画者の柱コメントや、突然入る作者によるモノローグ、縦笛を舐める、必死に身体測定を覗く、昔ながらだ!!!
さらに1巻収録最後の話は、主人公を完全にほっぽり出して、突然登場した女子大生と男子大学生が主軸。彼が惚れた女子大生は、40歳ぐらいのギャンブルで生計を立てる男と付き合っていた。思いを告げるも気持ちは届かず、扉一枚隔てた部屋の中で処女を散らされるのを聞き耳立てる。さらに回数を重ねた結果足りなくなったコンドームを、オッサンの指示で買いに行かされる女子大生。それを見せつけられる男子大学生。何やねんこれ。笑ってしまう。
「7回だぜ、イェーイ(オヤジを舐めるな)」このへんの順位、セックスという感じがする。

13 位 カタワレノワレワレ/ノッツ

f:id:kuroasagi:20131226175840p:plain:left:h300f:id:kuroasagi:20131226180446j:plain:right:w200
未単行本化。WEBイキパラCOMIC【カタワレノワレワレ】ノッツで全話読める。(2013/12/26)
ノッツ先生は23歳Dカップ女子大生なんですけど、今年は『クルミクンNOFUTURE』って単行本も出して、そのギャグ、くだらなさ、可愛さが最高だったので是非ランキングで触れておきたかったんですけど、まぁ今年のノッツ先生から選ぶなら「カタワレ」しか無いっすね。
本作はミステリアスな大学生2人の不思議な関係性を描いてると思ったらサークルクラッシュ漫画になってセックスが絡んで草生えラブコメになってセックスして、次週最終回!!!
ランキング入れて良かった~~~~~~~~。セックスをなんでそんなに強調するんだぁ~~~~~。やっぱ大学生はセックスだった~~~~勉強しろやボケ。(2013.12.25)
最終回読んだ! 何にもない終わり方だった! 絶対に許してはいけない~~~~~(2013.12.28)

14 位 はるのうららの/三崎汐

はるのうららの (EDGE COMIX)

はるのうららの (EDGE COMIX)

ランキング提出前に読むと高評価になる現象ではあるかも。この人は今年3冊単行本出してるけど、『このBLがヤバい』では触れられて無かったみたい。ちなみに他2冊はそこまで面白くはなかった。
とある理由でクラスでハブられ気味の春希と転校生のしゅんちゃんの、絶妙な関係性のお話。
表紙・帯・巻頭のカラーから既に好みの臭いしかしなくて引き込まれた。小学生~中学生の繊細な機微、過去による抑圧、"普通"の重責、家庭環境による常識差の自覚とかとか、描かれている一つ一つのパーツはとてもありふれていて革新的なことは別にないのだけど、それらすべてが丁寧だから盛り上がるべきところでしっかり泣いてしまう。あと、モノローグが良い。目の描き方も好き。良い新人だナァ。

15 位 アキタランド・ゴシック/器械

アキタランド・ゴシック (1) (まんがタイムKRコミックス)

アキタランド・ゴシック (1) (まんがタイムKRコミックス)

あきためく謎の土地「アキタランド」に住む女の子たちの日常。DIYしたりゾンビと戦ったり雪かきしたりナマハゲ倒したり。
世界設定が退廃的かつ牧歌的というか、独特の魅力がある。女の子は可愛いし、いつまでも見ていたい感じがしたが終わってしまった。機械先生の次回作はまだか。

16 位 彼とカレット。/tugeneko

彼とカレット。

彼とカレット。

4コマゾーンだ。日常→セクハラする→殴られてるオチという様式美には、everything,in its right placeを感じる。よくネットで流れてる、パワプロの人だってひと目で分かるのは流石。
彼とカレット|週刊アスキーPLUSで全話読める。単行本がでたのに全話読める豪気なサイトだ。
ちょっと順位高いかもしれん。

17 位 モンクロチョウ/日暮キノコ

モンクロチョウ(1) (ヤングマガジンコミックス)

モンクロチョウ(1) (ヤングマガジンコミックス)

最近ありがちに見える童貞漫画をここまでエグく描いてくれるのはいいなぁ。「食う寝るふたり 住むふたり」の作者がこんな作品も書くのかという驚きも含め。過剰な自意識と、劣等感を優越感で埋めようとする欺瞞、置いて行かれる不安と自分にはなにもないという虚無感、それを埋めるセックス。青春の痛々しさが濃密に詰まっていて、頭を痛くさせる力があった。まぁセックスはしたこと無いけど。
ただ、イマイチ作品テーマを描ききらないまま完結してしまって、消化不良な感じが残った。最後まで読んでから評価するべきだった。

18 位 勇者ヴォグ・ランバ/庄司創

勇者ヴォグ・ランバ(1) (アフタヌーンKC)

勇者ヴォグ・ランバ(1) (アフタヌーンKC)

三文未来の家庭訪問」という短篇集も今年発売されたけど、ランキングに入れるならこっちかな。「三文未来」に収録された「辺獄にて」は素晴らしかった。
全2巻の本作は、「ペインフリー」という、人間の苦痛を完全に失わせるシステムが施行された世界と、それにクーデターを起こそうとする主人公の話。「人間を人間たらしめるものは何か?」というテーマに答えつつ、世界を救う”勇者”を描いていて面白かった。画力というか人物や動きにあまり迫力はないのだけど、デザイン性は魅力がある。幾何学的な大コマや凄惨な見開きなど、強く印象に残す力がある。今年の期待の新人って感じ。

19 位 バイオーグ・トリニティ/大暮維人 舞城王太郎

西尾維新枠かな……そんな枠は無いけど。
スタイリッシュなんすよね。かっけーデザインとキレッキレで痛々しい台詞。「2秒で死ね」とか、めちゃ好き。
テーマも青春におけるアイデンティティと恋愛で、バトルしつつその表現が美しい。これだけ書き込んでカッケー見開きのデザインが出来る漫画ってなかなか無いっすよ。良質エンタメ漫画ですな。いや~いいコンビだ。来年はこの位置に「ALL YOU NEED IS KILL」が居る気がする。まだ連載始まってないけど、原作を読んだ限りでは。

20 位 雨男晴れ女/ゆずチリ

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クラブサンデー|作品詳細|雨男晴れ女で読めます。読み切りです。
ネクラで自信がない主人公が親友のイケメンのアシストのお陰で可愛い女子と会話するようになりその可愛い女子に告白されるんだけど「きみは誤解してるよぼくはそんな人間じゃない」と断るんだけどさらに親友がアシストしてくれてデートに行ってさらに告白されるんだけどやっぱり自分の肯定が出来なくてうじゃうじゃしてたらその女の子に「私がいいんだからいいの!」と一喝される漫画です。
神。
主人公には全く主体性がなくて、でも隠れた長所があってそれを認めてもらえて、友人に助けてもらって彼女が出来る。
ウジウジしていた昔の自分を思い出しました。
ゆずチリ先生はゲッサンminiで読み切りをチラホラ載せてますが、あんまりおもしろくないですね……。ゲッサンminiには「からかい上手の高木さん」という漫画が面白いですが、単行本は出るんですかね。

21 位 おしゃべりは、朝ごはんのあとで。/秀良子

おしゃべりは、朝ごはんのあとで。 (ビッグコミックス)

おしゃべりは、朝ごはんのあとで。 (ビッグコミックス)

朝飯漫画。フランスや築地や京都やらで自費で朝ごはんを食べて「おいしいよ~」って言うだけの漫画。
ご飯がおいしそうでよかった。あと、ハワイ編のカラーの美しさはWEB漫画ならではだなぁと思ったかな。単行本でも読んだけど、やっぱり画面で見たほうが白色が明るくてハワイっぽかったなぁと。
個人的にやわらかスピリッツを応援したいという気持ちもあってランクイン。やわらかスピリッツでは2番目に面白かったのに連載が終わってしまって悲しかった。
秀良子は「このBLがヤバい!2013」の1位「宇田川町で待っててよ」と「年々彩々」も読んだけど、そっちはあんまりだったかな。「年々彩々」の発想は面白かったけど。

22 位 富士山さんは思春期 富士山さんは思春期 オジロマコト

富士山さんは思春期(1) (アクションコミックス)

富士山さんは思春期(1) (アクションコミックス)

エロい~~~。アダルト!
まぁ、エロい漫画ではない。180cm超の中学二年生の女の子富士山(フジヤマ)さんと、クラスメイトの平均より小さめぐらいの男子が付き合う日常もの。視界の切り取り方が上手くて、あの、セミが鳴き握った手にはじっとりを汗が滲むような青春の日々を思い出させてくれるんだよぉ。富士山さんはでっかくて、どーんという迫力があるよなぁ、でも中学二年生らしい、健全なエロスがあるんだよ。上靴のカカトを履きつぶしてたり浴衣の似合い具合にドキッとしたり、そういうのがいいんです。なので2巻のおっぱい見えるみたいな露骨なエロは反省しろ!アダルト!
俺も軽率な行動を窘められたい。

23 位 メイドインアビス つくしあきひと

つくしあきひと氏の圧倒的書き込みと、自分の好きなことを描いてるってわくわく感がよい。
大穴をどんどん下っていく王道ファンタジーとロリショタ。
全体ランキング力を高めてしまった結果という感じある。

24 位 深海魚のアンコさん 犬犬

深海魚のアンコさん(1) (メテオCOMICS)

深海魚のアンコさん(1) (メテオCOMICS)

全体ランキング力を高めてしまった結果という感じある。
もうみんなが面白いって言ってると面白い気がしてきちゃうんだよね。漫トロに所属せずにランキングを作ってなかったら入ってない気がするけど、アンコさんが可愛いことにはなんの偽りもない。はぁ~~~~~最新号もかわええんじゃ~~~~

25 位 リピートアフターミー ヤマモトマナブ

リピートアフターミー(1) (ブレイドコミックス)

リピートアフターミー(1) (ブレイドコミックス)

「10回限定の1日ループ」を使って悲劇を回避しようとするタイムループサスペンスミステリコメディ?
個人的に「僕だけがいない街」を読んでいてまぁおもろいなぁと思っていたんだけど、似たような題材を扱った作品が出て、比べるとこっちの方が面白いと感じた。こっちは構成が上手で、読んでてどんどん情報が出てきて加速してるんだけど読みにくくないんだよね。「僕だけがいない街」は尻すぼみで終わるんじゃないかという不安が強くてまだ評価の壇上に挙げられなかった。全9話でスピーディーに終わるのも好印象。また面白い新人が出てきたなぁ。

26 位 ギャル男vs宇宙人 吉沢潤一

ギャル男vs宇宙人 (ビッグコミックス)

ギャル男vs宇宙人 (ビッグコミックス)

ギャル男と宇宙人が闘う漫画です。
この作品を読んで思ったのは、僕自身とは全く繋がりのない東京のギャル男たちにも日常があり、刹那的ではあるが友情があり、また刹那的でない友情もあり、それは世界とつながっているのだということ。
宇宙人を追いかける見開きと、翌日みんな飽きて帰っていくの、とても良かった。
そしてトリップ回は白眉。
笑えるし哀愁もある。

27 位 失踪日記2 アル中病棟 吾妻ひでお

失踪日記2 アル中病棟

失踪日記2 アル中病棟

人生なんとかなるねんから死んだらあかんなぁ。
氏の卓越した漫画技量によって描かれるアル中病棟の日常は、客観性を持ちつつどこか当然のように狂っている。コメディチックに話は進むため楽しく読めるが、その普通さは「僕の日常もアル中病棟と地続きであり、その違いは一歩の踏み外しに過ぎない」とじわりと恐怖を伝える。その点で、妻の見舞いの話は象徴的だ。治療が進み外出した際、素面で見るお外の世界はあまりに平和でほんのりとしていて、「素面って不思議だなぁ」と噛みしめる。人生の肯定だなぁ。「酒無しでこの辛い現実に、どうやって耐えていくんだ?」その答えこそが、その人なりの人生を表すのだろう。僕の場合はなんだろう、と、考える。わからん。
あとやっぱり、「自分」って思ってるより不安定なもので、ストレスが溜まるとイライラして攻撃的になるし、素直にそれを自認できないものなんだな、と。

28位たぶん惑星 粟岳高弘

たぶん惑星(1) (REXコミックス)

たぶん惑星(1) (REXコミックス)

物質的で人工的な現代社会から距離を取り、自然に囲まれた擬地球での暮らし。そこにはARIAのような理想郷的日常があり、原生知的生物とのゆっくりやわらかな非言語コミュニケーションがある。ノスタルジーだ。もちもちだ。人生の夏休みだ。そういうアレとは別にやわらかい少女の露出を見てると悶々とする。

29 位 足摺り水族館 panpanya

足摺り水族館

足摺り水族館

表紙はもちろん透明なカバーで覆われているのが購入意欲を煽るし、雰囲気も出てる。少ない線で真っ白に書かれる人物らと対照的に、濃く書き込まれる街、を、少女が放浪する。街が主役なのではないか?とさえ感じる。雑多にひしめく看板屋うらぶれた商店街、寂れたビルにノスタルジーを感じる年齢ではないけど、少女らの絶妙な言語センスとコマのテンポに揺られながら一緒に街を徘徊すると、日常から少しズレた異界を旅している感覚を覚える。死に接近したり、皮肉たっぷりの館を巡ったり。それでいてある日見た夢の話だったり、一貫して冗談なのかわからんような「マシン時代の動物たち」があったり。油断ならない感じがある。「話しかける星の声に目を覚まし、ささやく星の声に眠りにつくのです たといそれが幻想だったとしても」「聞こえてくる彼らの声に私は私の行く先を思い出す どこへ行くのかは私の知ったことではない」これ好き。 あと、こういう本が買える小売店があるって大切だね。

30 位 実在ゲキウマ地酒日記 須賀原洋行

実在ゲキウマ地酒日記(1) (イブニングKC)

実在ゲキウマ地酒日記(1) (イブニングKC)

感謝と追悼と日本酒。

総評

26-30位に漫画読み感があって良かった。
この個人ランキングを含む京大漫トロピー会誌vol.11が、コミックマーケット85三日目西”も”17-bにて販売されますのでどうぞよろしく。

*1:僕の人生には辛いことなんて特にないけど

*2:京大漫トロピーランキング2013第一位

*3:中山敦支。YJで『ねじまきカギュー』連載中。過去作に『トラウマイスタ』など。