ああああ

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強迫的なモノローグの掛け合い-『春の呪い』(小西明日翔)(1巻)

春の呪い 1 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)

春の呪い 1 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)

【あらすじ】
ずっと好きだった妹が癌で死んだ。今私は、妹の恋人だった男と交際している。「妹と一緒に行った場所へ私を連れて行ってくれるなら」という条件をつけて。

【感想】
設定ありきの短編小説みたいな話。宮崎夏次系なら18ページで書きそう。主人公・夏美にとって、唯一の家族であり、愛することの出来た人間であった妹・春は、癌で早逝してしまった。春の死後、春の恋人であった男・冬悟が、夏美に交際を申し込み、二人は思い出の地を巡る……という、あまりに象徴的な舞台設定の上でのドラマ。記号的とさえ言えるかもしれない。
夏美は、両親からの愛情を認識できなかったために妹に献身的に依存し、その妹の心を奪っていった冬悟に対して嫉妬や憎悪と呼べるような感情を抱いていた。冬悟は、良家の末っ子という環境の中で、自己の感情を知らず知らずに抑圧してきていたが、それを刺激される存在として、夏美に興味を抱いていた。

簡単にいえば、生きる理由を失った女と生きる理由を見つけられていない男が亡き春を言い訳にして交際を行っているのが一巻の内容。この作品が優れていると思ったのは2人の独白の密度で、悪く言えば絵で読者の想像の余地を残す部分というのはほとんど無いんだけど、言葉にずっとついていってページを捲らさせられる感覚がある。例えるなら会話劇を読んでいるような感覚。特に1,2話の空気感はすごくよく出来ていると思う。1話では夏美目線、2話では冬悟目線で、どちらかの目線の時には一方の内面を吹き出しに頼って語っていないところも好感が持てた。

これは3・4話も一貫されている、と思ったんだけど、3話では冬悟が(気づいていないのか……)と内面を示していて、残念だった。どうせ4話で夏美が気づく時に説明できるんだからここの吹き出しは無いほうが良いよな~、と個人的には思うのだけど、こういう「一人称の物語での目線漏れ」って、他の人はあんまり気にしないんだろうか。

話を広げようがないし、もともと2冊で終わる予定だったようで、次巻ではネット上に偶然見つけた春の日記が物語終幕の鍵になるようだ。夏美の義母も夏美に説教しそうな雰囲気をぷんぷん醸し出している。特に一巻ではモノローグの応酬であって会話にはほとんど成っていないから、この作者が「キャラの自分語り」ではなく「会話/交流による解決」を描けるかどうかは次巻での課題ということになっている。

生きている罪悪感に震えて叫びだしたり、人生に虚無感を覚えていた人間が人生初めての恋愛に頭を殴られるような衝撃を覚えながらも自分の性格を崩せなかったり、そんな描写が好きなら読んでも良いと思う。(2016・5・15)